強力磁石に警告表示は誤飲などの事故抑止にはつながらない
「Pediatrics」より
強力磁石は小児にとって危険な異物の一つであり、消費者団体や医療関係者は製造禁止を訴えている。しかし、製造者側は警告表示があれば問題ないなどと主張している。この度、強力磁石を誤飲するなどした若年者の保護者を対象とした調査で、約9割は、誤飲などの危険性に関する警告が表示されていたことを認識していないか、表示されていても目を通していなかったとする研究結果が、「Pediatrics」に10月3日掲載された。論文の著者らは、「警告表示があったところで、子どもの誤飲事故の抑止にはつながらない」と警鐘を鳴らしている。
米ネーションワイド・チルドレンズ病院/オハイオ州立大学医学部のLeah K. Middelberg氏らは、IMPACT of Magnets(Injuries, Morbidity, and Parental Attitudes Concerning Tiny high-powered Magnets)研究のデータを用いて、強力磁石による事故(誤飲または体内挿入)を経験した0~21歳の若年者の保護者を対象に、後ろ向きの多施設共同研究を実施した。参加者には、強力磁石に警告表示があったか否か、また、それが役に立っているかを評価する調査に回答してもらった。調査の対象は、IMPACT of Magnets研究に参加した596人の患者のうち、その保護者173人と成人患者1人の計174人だった。強力磁石による事故に遭遇した時点の患者の平均年齢は7.5歳で、男性(男児)が61.5%(107人)だった。
事故原因となった製品174個の用途は、77個(44.3%)は子どものおもちゃ、37個(21.3%)はデスクトイやストレス解消グッズ、25個(14.4%)は留め金やフックだった。磁石の危険性を認識していたのは、174人中101人(58%)だった。一方で、162人(93.1%)は米国消費者製品安全委員会(CPSC)によって強力磁石は米国市場から撤去されたことを知らず、事故後でも42人(24.1%)は磁石を廃棄していなかった。
また、174個の製品のうち28個(16.1%)は製造業者が特定され、このうち27個には何らかの警告が表示されていた。警告表示に関する質問には113人から有効回答が得られた。表示の有無について、60人(53.6%)は「分からない」と回答し、「あった」としたのは28人(24.1%)、「なかった」としたのは25人(22.3%)だった。「あった」と回答した28人のうち、表示を「読んだ」と回答したのは13人と半数に満たなかった。つまり、約9割に当たる100人は警告表示があることを認識していなかったか、読んでいなかったことが示された。
以上の結果から著者らは、「強力磁石に警告表示があっても、子どもの誤飲事故が防げるわけではないことが分かった。政府が強力磁石を市場から排除しない限り、今後も事故の発生は続くだろう」と述べている。(HealthDay News 2022年10月3日)
- 書誌事項
Warning Labels and High-Powered Magnet Exposures
Middelberg LK, et al. Pediatrics. Published online October 3, 2022. doi: 10.1542/peds.2022-056325