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『トラウマ経験は6歳時点で精神障害と関連する可能性』のイメージ

トラウマ経験は6歳時点で精神障害と関連する可能性

「The Lancet Psychiatry」より

 小児期のトラウマ経験は、児のその後の精神への多大な負荷となり得るとする研究結果が、「The Lancet Psychiatry」12月号に掲載された。幼児期にトラウマを経験すると、すでに6歳の時点で、不安障害などの精神障害を発症するリスクが上昇していたという。

 ペロタス連邦大学(ブラジル)のAndreas Bauer氏らは、ペロタス市の全ての医療機関で2004年1月1日から12月31日までの1年間に出生した全ての児を対象とした前向きの出生コホートデータを用いて、小児期のトラウマ経験と精神障害発症との関連について検討した。6歳および11歳の時点で、保護者からの回答に基づき、精神障害〔不安障害、気分障害、注意欠如・多動症(ADHD)、行動障害および反抗性障害〕の有無の評価、およびトラウマ曝露の経験の調査を行った。トラウマを対人トラウマ(心理的虐待や家庭内暴力など)と非対人トラウマ(甚大な事故や災害などの経験)に層別化した上での分析も行った。解析には多重代入法とロジスティック回帰モデルを用いた。

 11歳時点の完全なデータを入手し得た3,367例中1,154例(34.3%)が、11歳までにトラウマを経験していた。生後48カ月時点での精神的な健康状態や主な交絡因子を調整すると、6歳までのトラウマ経験は、6歳時点における不安障害〔調整オッズ比(OR)1.79、95%信頼区間(CI)1.33〜2.42、P=0.0001〕および何らかの精神障害(同1.59、1.22〜2.06、P=0.0005)のリスク上昇と関連していた。また、11歳までのトラウマ経験は、11歳時点での何らかの精神障害(同1.45、1.17〜1.79、P=0.0007)のリスク上昇と関連したほか、不安障害(同1.47、1.04〜2.09、P=0.029)、気分障害(同1.66、1.08〜2.55、P=0.020)、ADHD(同1.47、1.01〜2.13、P=0.042)、行動障害および反抗性障害(同1.76、1.19〜2.61、P=0.0049)の4つの診断分類全てのリスク上昇と関連していた。

 対人トラウマと非対人トラウマはいずれも、両方を経験した場合を調整しても、何らかの精神障害のリスク上昇と関連していた(対人:調整OR 1.44、95%CI 1.07〜1.92、P=0.019、非対人:同1.40、1.04〜1.87、P=0.024)。診断分類別に見ると、対人トラウマは不安障害(同1.54、1.01〜2.35、P=0.047)、気分障害(同1.86、1.12〜3.09、P=0.016)、行動障害および反抗性障害(同1.94、1.21〜3.11、P=0.0062)、非対人トラウマは不安障害(同1.60、1.05〜2.42、P=0.027)のリスク上昇と有意に関連していた。

 著者らは、「トラウマと精神障害との関連はすでに6歳時点で存在し、またトラウマの影響は、11歳時点でも複数の診断分類において続いているものとみられる。エビデンスに基づいて、小児期のトラウマの発生を減らすこと、およびトラウマがもたらす悪影響に対処することは、わが国における喫緊の課題である」と述べている。(HealthDay News 2022年11月16日)

書誌事項

Associations between childhood trauma and childhood psychiatric disorders in Brazil: a population-based, prospective birth cohort study
Bauer A, et al. The Lancet Psychiatry 2022 December;9(12):969-977.

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