北米におけるヒト免疫不全ウイルス感染者の母乳育児:多施設調査。
アブストラクト
背景:北米諸国では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に対する懸念から、国のガイドラインが母乳よりもミルクを強く推奨している。しかし、資源に乏しい環境から得られたデータによると、ウイルスが抑制されている人のリスクは1%未満である。高資源環境における母乳育児の経験に関する情報は不足している。
方法:米国(8施設)およびカナダ(3施設)において、2014~2022年に母乳育児を行ったHIV感染者について、後方視的多施設調査を実施した。データ解析には記述統計学を用いた。
結果:報告された72例のうち、ほとんどが指標となる妊娠前にHIVと診断され抗レトロウイルス療法を受けており、出産時のウイルス量は検出不能であった。母乳育児を選択した理由として最も多く報告されたのは、健康上の利点、地域社会の期待、親子の絆であった。授乳期間の中央値は24週(範囲:1日~72週)であった。乳児予防のためのレジメン、乳児と出産両親の検査のプロトコールは、施設によって大きく異なっていた。離乳後 6 週以上経過して検査結果が得られた乳児の 94%において、新生児感染は認められなかった。
結論:本研究は、北米で授乳したHIV感染者のコホートとしてはこれまでで最大規模のものである。調査結果は、方針、乳児の予防、乳児と親の検査実施において、施設間で大きなばらつきがあることを示している。この研究では、感染の潜在的リスクと個人的要因および地域社会的要因を比較検討する際の課題について述べている。最後に、本研究は、1つの場所で母乳育児を選択したHIV患者の数が比較的少ないこと、および最良のケア実践を特定するためのさらなる多施設研究の必要性を強調している。
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