Nav1.2チャネルの高速不活性化を妨げる変異はSCN2A脳症を引き起こす。
DOI:10.1093/brain/awae213
アブストラクト
SCN2A遺伝子に関連した早期乳児発達てんかん性脳症(EI-DEE)は、乳児期に発症するまれで重篤な疾患である。高速不活性化ゲーティング機構に影響を及ぼすSCN2A変異は、コード化された神経細胞Nav1.2チャネルの電圧依存性の変化と不完全な不活性化をもたらし、神経細胞の興奮性に異常をきたす。本研究では、DEEに関連する7つのミスセンスNav1.2変異体の臨床データを評価し、分子動力学シミュレーション、パッチクランプ電気生理学、およびダイナミッククランプ・リアルタイム神経細胞モデリングを行い、変異の分子および神経細胞スケールの表現型の帰結を明らかにした。N1662D変異は、活性化に影響を与えることなく、速い不活性化をほぼ完全に阻止した。野生型とN1662Dチャネルの構造を比較した結果、N1662残基とQ1494残基の間のambifunctional水素結合形成が高速不活性化に必須であることが示唆された。Q1494AあるいはQ1494LのNav1.2チャネル変異体では高速不活性化を防ぐことができたが、Q1494EあるいはQ149Kの変異体では不活性化が不完全で電流が持続した。分子動力学シミュレーションの結果、N1662DおよびQ1494L変異体では、野生型に比べて疎水性IFMモチーフの受容体部位への親和性が低下していることが明らかになった。これらの結果は、N1662とQ1494の相互作用が不活性化ゲートの安定性と向きを支え、高速不活性化の発現に必須であることを示している。DEEに関連する6つのNav1.2変異体についても、高速不活性化に関与することが知られているチャネルセグメントにマップされた変異を評価した。一方、M1501V, M1501T, F1651C, P1658S, A1659V変異体は、動的活動電位クランプ実験において、ハイブリッドニューロンの活動電位発火を増強し、機能獲得と一致する生物物理学的特性を示した。逆説的ではあるが、N1662DやL1657Pの電流密度が低いと活動電位の発火が増強され、逆に密度が高くなると持続的な脱分極が生じた。この結果は、Nav1.2チャネルの高速不活性化の分子メカニズムに関する新しい構造的洞察を提供し、SCN2A関連EI-DEEの治療戦略に役立つ。非活性化Nav1.2チャネルが神経細胞の興奮性に寄与することは、SCN2A関連DEEの病態において、別個の細胞メカニズムを構成する可能性がある。