インドネシアの低出生児の胎盤におけるERVW-1の低値とVEGF、FLT-1、HIF-1遺伝子の高発現。
DOI:10.1016/j.placenta.2024.07.006
アブストラクト
はじめに:胎盤の血管新生不良は、低出生体重児(LBW)の成長障害や成人後の代謝障害のリスクが高い胎児発育制限(FGR)など、いくつかの妊娠合併症と関連している。シンシチンノックアウトマウスを用いた最近の研究では、胎盤の脈管形成が著しく阻害されていることが示された。ERVW-1遺伝子にコードされるシンシチン-1は、胎盤の血管新生に関与していると提唱されているが、LBW児の胎盤における血管内皮増殖因子(VEGF)などの他の血管新生因子との関係はまだ明らかにされていない。FGRのメカニズムを知ることで、今後より積極的な予防・治療対策が可能となる。本研究では、LBW児胎盤におけるERVW-1、血管新生遺伝子VEGFおよびその受容体(FLT-1)、低酸素誘導因子-1(HIF-1)の発現を明らかにし、LBW児胎盤におけるこれらの遺伝子の発現との関連を検討することを目的とした。
方法:胎盤組織から全RNAを抽出した。全RNAをcDNA合成の鋳型として使用し、その後qRT-PCRを行った。ERVW-1、VEGF、FLT-1、HIF-1遺伝子の発現の相関を線形回帰で解析した。
結果:LBW児と正常出生体重児(NBW児)の母親の年齢と肥満度に有意差はなかった。LBW児の胎盤におけるERVW-1の発現はNBW児の胎盤よりも低かったが、VEGF、FLT-1、HIF-1の発現は高かった。ERVW-1はHIF-1およびVEGFと負の相関を示した。
考察:LBW児の胎盤におけるERVW-1の低発現は、胎盤の血管新生に障害をもたらし、低酸素症を引き起こす可能性がある。