オーストラリア、ニューサウスウェールズ州における救急外来受診後のワクチンで予防可能な呼吸器感染症による入院の傾向(2012-2022年)。
DOI:10.1111/irv.70015
アブストラクト
背景:ワクチンで予防可能な呼吸器感染症は、世界の医療システムに大きな影響を与えている。ワクチンが利用可能であるにもかかわらず、ワクチン接種率、病原体の病原性、および地域社会における伝播動態の変動により、これらの呼吸器感染症は公衆衛生上の重大なリスクであり続けている。ワクチンで予防可能な呼吸器感染症の傾向を把握するため、オーストラリアのニューサウスウェールズ州における2012年から2022年までの救急外来(ED)、入院、死亡のリンクデータを解析した。
方法:呼吸器感染症のような疾患で救急外来を受診した患者を、入院および死亡の記録とリンクさせた。救急外来受診の年齢標準化率、急性呼吸器感染症(ARI)および特定のワクチンで予防可能な疾患の診断により入院した割合、28日死亡率を年別・年齢別に推定した。
結果:2012年から2022年にかけて、ARI様ED患者は3,127,090人であった。年齢標準化率は2020年まで上昇し、2021年に低下し、2022年に回復した。すべての年において、ARI様ED受診者のうち16.6%が肺炎(7.9%)、インフルエンザ(1.1%)、RSV感染症(1.3%)、COVID-19(0.8%)、肺炎球菌感染症(0.3%)などの急性呼吸器感染症で入院した。入院した割合は65歳以上で最も高かったが、RSVは0~4歳の小児で最も高かった。最も死亡率が高かったのはCOVID-19で、65歳以上の成人において13.1%であった。
結論:本研究は、オーストラリアの医療システムにおいてワクチンで予防可能な呼吸器感染症が継続して負担となっていることを明らかにした。これらのデータは、ワクチン接種プログラムやその他の公衆衛生介入の有効性を監視するために利用できる。今後の取り組みとしては、サーベイランスとデータリンケージの強化に焦点を当て、精度を向上させ、的を絞った公衆衛生戦略を導くべきである。