ATRX遺伝子の新規フレームシフト変異の同定:症例報告と遺伝子型-表現型関係のレビュー。
DOI:10.1186/s12887-024-05088-0
アブストラクト
背景:X連鎖性知的障害-低身長顔貌症候群-1(MRXHF1)およびアルファサラセミアX連鎖性知的障害(ATR-X)症候群は、クロマチンリモデリング活性を示すスイッチ/スクロース非発酵性(SWI-SNF)タンパク質ファミリーのメンバーであるATRX遺伝子の病原性変異によって引き起こされる。これらの症候群は、特徴的な異形、軽度から重度の知的障害、運動発達遅延、痙攣、泌尿生殖器異常、消化器障害など、幅広い臨床症状を示す。
症例提示と文献的考察:中国人の非血族家系に生まれた3歳の男児が、全ゲノム配列決定によりMRXHF1と診断された。包括的な家族歴情報が得られた。2023年8月1日までMedlineデータベースでATRXの病因変異に関する論文を検索した。遺伝子/蛋白質変異と臨床症状に関するデータを抽出した。プロバンドは知的障害、運動発達遅延、典型的な顔面異常、泌尿生殖器異常、行動障害、視神経形成不全を示した。ATRX遺伝子の新規フレームシフト変異c.399_400dup、(p.Leu134Cysfs*2)が主な原因であり、これはATRXタンパク質のATRXDNMT3-DNMT3L(ADD)ドメインの直前に生じる。ミスセンス変異は最も一般的な変異型である。ADDドメインとヘリカーゼ様ドメインが最も頻繁に影響を受けるドメインである。てんかん、先天性心疾患、泌尿生殖器欠損、音響欠損、光学欠損は、フレームシフト変異を有する患者では、ミスセンス変異を有する患者に比べてより多くみられる。C末端フレームシフト変異では、N末端フレームシフト変異よりも泌尿生殖器欠損が多い。
結論:MRXHF1症候群患者におけるATRX遺伝子の新規フレームシフト変異を報告し、変異型と影響を受ける蛋白質ドメイン別にATRX変異の遺伝子型と表現型の関係をまとめた。ATRX変異の根底にある制御機構については、今後の研究で包括的な解析が必要である。