当センターにおけるアラジール症候群患者に対する肝移植の経験と成績。
DOI:10.6002/ect.pedsymp2024.O27
アブストラクト
目的:アラジール症候群は常染色体劣性遺伝の疾患であり、多臓器に病変を有する。アラジール症候群の患者には、非典型的な顔貌、後胚外反、蝶形椎、心異常、胆道系障害などの多くの随伴異常が認められる。肝臓と心臓の合併症はアラジール症候群患者の死亡率と罹患率を左右する。肝内胆管の欠如は胆汁うっ滞性肝障害を引き起こす。心臓では、この疾患は末梢性肺動脈狭窄を引き起こすのが最も一般的であるが、患者はさまざまな構造的心疾患を呈することがある。これらの心臓異常は、肝移植を必要とする患者の術中・術後管理を困難にする。ここでは、Alagille症候群による肝移植の10例を紹介する。
材料と方法:1988年から現在までに当センターでは724例の肝移植を施行し、そのうち366例が小児例であった。患者の形態学的所見、心病理、周術期合併症についてレトロスペクティブに検討した。
結果:患者の平均体重は11kg、平均年齢は4.9歳であった。8例に非典型的な顔貌、5例に後胚外反、6例に蝶椎がみられた。早期胆道閉鎖症が疑われたため、3例に門脈切開術(葛西式)が施行された。心臓病変は8例にみられ、末梢性肺狭窄が最も多かった(8例にみられた)。心臓カテーテル検査を受けた患者は1人で、右室圧は110mmHg、肺動脈圧は37mmHgであった。2例は術前に肺動脈形成術が必要であった。2例は上大静脈が二重になっていた。適切な容量補充により、無肝期に合併症が発生した患者はいなかった。早期死亡に至った患者はいなかった。
結論:Alagille症候群患者では、肝移植前の合併症を最小限に抑えるために心臓の異常を確認すべきである。必要であれば、肺動脈狭窄に対して心臓カテーテル検査を行うべきである。末梢性肺狭窄は肝移植の絶対的禁忌とはならない。