肝臓指向性遺伝子治療後のムコ多糖症VI型患者における複数年にわたる酵素発現。
DOI:10.1016/j.medj.2024.10.021
アブストラクト
背景:ムコ多糖症VI型(MPS VI)は、ライソゾーム酵素アリルスルファターゼB(ARSB)の欠損によるもので、グリコサミノグリカン(GAG)が多臓器に蓄積する。現在の治療法の限界から、MPS VIに対する肝臓指向性遺伝子治療の臨床試験が開発された。
方法:酵素補充療法(ERT)を中止し、肝臓特異的プロモーターの制御下でARSBを発現する高用量(6×10ゲノムコピー/kg)の組換えアデノ随伴ウイルス血清型8(AAV8)ベクターの単回静脈内注入を受けたMPS VI患者の長期追跡調査について報告する(ClinicalTrials.gov: NCT03173521)。主要アウトカムは安全性と尿中GAG排泄量であった。副次的アウトカムは持久力と呼吸機能であった。
所見:追跡期間中央値は45ヵ月(n=4、女性3人、男性1人、年齢範囲:5~10歳)。後発性の安全性イベントは認められなかった。患者は血清ARSB活性を維持し(健康な基準値の平均値の38~67%)、尿中GAG濃度をわずかに上昇させたが、持久力、心機能、肺機能に関連した変化はみられなかった。4例のうち1例では、遺伝子導入後約2.5年まで血清ARSB活性が低下することなく尿中GAG濃度が上昇したため、ERTが再開された。肝臓と脾臓の大きさは基準範囲内にあった。
結論:AAV8.TBG.hARSBの単回静脈内投与は安全であり、ほとんどの患者においてARSBの持続的発現と尿中GAGの緩やかな増加をもたらし、MPS VIに対する肝臓指向性遺伝子治療を支持した。
資金提供:本研究は、テレソン財団ETS、欧州連合、アイザック財団、イタリア大学・研究省から助成を受けた。