単細胞RNA配列決定により、ムコ多糖症治療における単球とマクロファージの重要な役割が明らかになった。
DOI:10.1038/s41598-025-97330-7
アブストラクト
ムコ多糖症(MPS)は、グリコサミノグリカン(GAG)として知られるムコ多糖の分解を司るリソソーム酵素をコードする遺伝子の変異に起因するライソゾーム貯蔵性疾患の一群である。MPSに対する現在の治療戦略には、造血幹細胞移植(HSCT)、酵素補充療法(ERT)、対症療法などがある。本研究では、ERTを受けている患者を対象に、ゲノムおよび単一細胞のシークエンシングを通じてMPS II型(MPS-II)の動的変化を調べた。異なる病期の10歳のMPS-II患者1人の末梢血単核球(PBMC)をscRNA-seqで解析したところ、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、CD4+およびCD8+T細胞、CD14+およびCD16+単球、B細胞など、さまざまな免疫細胞タイプが同定された。単球とマクロファージはMPS-IIの重症期には有意に減少したが、ERT後の回復期には増加した。特に、単球のサブタイプであるmono3は重症期にのみ発現し、mono1のサブタイプであるmono1_2は重症期には発現せず、異なる生物学的機能を示した。これらの知見は、単球とマクロファージがMPS-IIの病因とERTに対する反応において重要な役割を果たしていることを示唆している。Pseudotime、Gene Ontology、および細胞コミュニケーションの解析から、異なる細胞サブタイプに固有の機能があることが明らかになった。特に、MPS-IIにおけるERT中の細胞間相互作用を媒介する重要な分子として、マクロファージではCXCR3、PF4、APP、C5AR1、T細胞ではRPS19、B細胞ではHLA-DPB1、NK細胞ではADRB2、単球ではIL1B、C5AR1、RPS19、TNFSF13Bが挙げられた。全体として、統合的解析により様々な細胞タイプの発現動態が明らかになり、MPS-IIにおける変異が同定され、MPS-IIにおける転写プログラム、細胞特性、ゲノム変異プロファイルの包括的なアトラスが得られた。このデータセットは、高度な統合解析とともに、創薬ターゲットの発見やMPS-IIの治療戦略の改善に役立つ貴重なリソースである。
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