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学会レポート・取材

(20/11/7、8)第52回日本小児感染症学会総会・学術集会

感染症教育のこれから-指導者から-
「小児専門病院での感染症教育」

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2020年11月7日、8日で行われた「第52回日本小児感染症学会総会・学術集会」でのシンポジウム5「感染症教育のこれから-指導者から-」について、兵庫県立こども病院 感染症内科 笠井正志先生が発表された「小児専門病院での感染症教育」をレポートする。

小児専門病院における感染症教育と、求められる多彩な感染症治療

小児専門病院における小児感染症教育は、感染症診療、感染対策、学術活動の3つから成り立っている。

小児専門病院における診療・教育の対象は多彩である。まず、様々な感染源の存在がある。

重篤な疾患が多く、感染症を発症しやすい。また、抗菌薬使用をせざるを得ない状況になることが多く、耐性菌発症の温床になりやすい。ウイルスを中心とした子ども特有の感染性疾患が多く、おそらくそのウイルス量は成人より多く、院内感染対策上でも困難を抱えている。

続いて、多彩な「感染に弱い子」の存在がある。

原発性免疫不全、免疫抑制剤、白血病など免疫不全患者の存在、慢性の心肺疾患、そして早産・低出生体重児など極めて感染しやすく、一度感染すると重症化しやすい児が多いのも小児専門病院の特徴である。

3つめに、多彩な「スペシャリスト」の存在がある。

抗菌薬は何でもいいという無関心層の存在、また、日々各科間・診療部対看護部・コメディカルなど組織間での抗争があるが、スペシャリストは一度信頼すると以降任せてくれる傾向が強いというメリットもある。

いずれにしろ、集中治療の発展で重症例が集約化され、感染症専門家の需要が高まっている。

また、基礎疾患に対する行動医療が発展し、複雑な感染症合併症が増え、専門診療の需要が増していることにより、感染症科のニーズが高まりつつあることは日々実感している。

感染症への対応を通した医師教育

特殊な感染症への対応、集中治療室や免疫不全症に関わる感染症対応といった合併症診療に加え、一般的な感染症や周術期予防法についてもプロトコル作成など他科医師と協力しつつ標準的な診療を推進していく必要があり、これらすべてが教育であると考えている。

チーム医療を通じた多職種への教育

2016年より、兵庫県立こども病院では、感染に関わる個々のメンバーが互いに専門性を発揮し、教育しあって成長できるチームを目指して「KPIC」(Kobe Prevention and control of Infection for Children and family/ケーピック)を発足した。

「KPIC」の中心は感染症科ではない。感染症科は他の専門チームと同格とし、それぞれが役割を自覚し、連携・自立するチームを目指した。

「KPIC」は、CNICを中心に病原微生物の伝播予防を主に関わる「ICT」、薬剤師を中心に各科抗菌薬使用症例のすべてに関わる「AST」、ワクチン啓発、接種実施や相談業務に関わる「予防接種センター」、検査技師を中心に微生物検査の適正化、アウトブレイクの把握などに関わる「微生物斑」、そして臨床現場を担当する感染症科で構成される。

2016~2018年、チームが自走するまでの兵庫県立こども病院の取り組み

2016年より、すべての入院児に行っていたサーベイランス培養を原則中止。ASTを設立し、保健所との定期ミーティングを開始した。2016年後半は集中治療領域における医療関連感染症サーベイランスをCNICが中心となり行い、予防接種センターの立ち上げを実施。院内外に向けた教育的学習会を開始した。

2017年にはAST活動を薬剤師に委ね、薬剤師がプレゼンを行い感染症科医師、総合診療科医師が集まる症例カンファレンスを開始した。院内における抗菌薬投与量やマニュアル、プロトコル作成も、薬剤師が中心となり行っている。

この結果、2018年からはチームは自走し、感染症対策の相談が演者にくることはなくなった。

また、チームでの臨床研修は薬剤師、微生物検査技師がそれぞれ2020年に論文投稿し、アクセプトされることになった。これも重要な教育であったと考えている。

教育は子どもたちの未来を創るため

小児専門病院での感染症教育は、診療やチーム医療推進だけではなく医師や多職種の教育観点からも必要であると考えている。

感染症教育は医師教育の主要な一部である。コンサルテーションで主治医の診療をサポートしつつ、チーム医療・標準的診療を推進し、その成果を形にすることが実践可能な教育スタイルだと考える。

我々小児感染症医にとって、教育の目的は「子どもたちの未来を創るため」である。
子どもたちを守るため、今と未来の医療を作るために教育は必須である。

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