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学会レポート・取材

第123回日本小児科学会学術集会

小児科医としての働き方改革の課題とその方策

掲載日:

小児医療に携わる7人の演者がそれぞれの立場から、小児科医の働き方の現状や課題、そしてその解決策についてのアイディアなどを発表した。

2019年病院調査の概要
(東京大学大学院医学系研究科ヘルスサービスリサーチ講座/日本小児科学会情報管理委員会 道端 伸明先生)

2019年病院調査の報告では、2017年調査の結果に比べ、施設あたりの小児科医師数の増加(平均 4.9→5.7名)、当直明けが休日の施設、退院調整看護師を配置する施設の増加(それぞれ 9.8→15%、17→37%)がみられた。人員の集約化をはじめとする働き方改革の成果が示唆されている。

小児科医のフィールドの拡張
(富山大学大学院小児科学 種市 尋宙先生)

人材・業務の日勤-夜勤での不均衡、コロナ禍での外来減少を踏まえると、日中の学校保健や乳幼児健診、虐待対応、在宅医療支援など、院内にとらわれず業務の幅を広げることで、結果的に夜勤の人材不足を解消できることが期待できる。

新生児医療
(東京大学附属病院小児・新生児集中治療部 高橋 尚人先生)

新生児成育医学会調査2017の結果からサブスペの偏在による新生児医の人材不足を踏まえると、新生児医療の重点化・集約化・広域協力体制等は依然として必要である。

小児救急医療体制
(日本小児科学会小児救急委員会 濱田 洋通先生)

集約化及び医療圏広域化がまだ不十分であり、小児部門が経営上の負担となる状況が依然としてあるため、その解決策として「こどもの救急」アプリ活用や、家庭教育、他職種・施設間での連携、小児医療への財政支援などが求められる。

男女共同参画
(横須賀市立うわまち病院小児医療センター小児科/日本小児科学会男女共同参画委員会 宮本 朋幸先生)

小児科医の男女共同参画という観点から、ジェンダーステレオタイプの打破と男女が平等に達成できる新しいキャリアアップのしかたの構築と啓蒙がまだ必要である。

「ステージ別男女共同参画社会」として、ステージⅢ「男女とも平等に役割を果たし業務の発展に寄与し、自身のキャリアアップも達成する」社会への移行を目標とし、それまでの現状分析の指標としてⅠ「女性は仕事を控える」Ⅱ「女性は短時間勤務等を利用して仕事を継続する」を設定。現状では、例えば育休明けの復職時、フルタイムでは 6% しか戻れておらず、一部免除フルタイム 22% しかない等、ステージⅡであったとしても、まだ課題に満ちている状態だと指摘した。

小児科医のキャリアの在り方
(あいち小児保健医療総合センター救急科/日本小児科学会将来の小児科医を考える委員会 伊藤 友弥先生)

小児科医の平成30年までの6年間の喪失数は711名を超えており他科と比べて少なくなく、これはワークライフバランスを保った持続可能な働き方・キャリア形成が必要であることを示唆する。学会が率先し、個人が流動的に個性を発揮し活躍できるチーム医療体制を作っていくべきである。

タスクシフティング
(関西医科大学小児科 石崎先生)

厚労省『新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会 報告書』の医師業務のうち20% 弱がシフト可能であるという報告を踏まえ、今後どこまでシフト可能かを検討しながら、他職種との連携を強めることが重要である。

Growth Ring事務局医学生スタッフコメント

「年間1,860時間以下」この時間外労働規制について議論が巻き起こったのも記憶に新しいのではないでしょうか。もちろんこの規制は一部医療機関に限られた"条件付き"規制でしたが、医学生の私にとっては途方に暮れるような数字だったのを覚えています。

医師というのは不思議な職業だと感じます。

学生時代から専門外の領域を含めた幅広い知識を習得し、診察・検査・診断・治療を行いながら、同時に患者さんとの人間関係を構築していく...。素晴らしい職業だと思います。
だからこそ、その価値を発揮するために最適な働き方を追求する必要があるのではないのでしょうか。

石崎先生が解説された「タスクシフティング」は、医師は医師にしか生み出せない価値を追求しながら、様々な職種が関わり合いながら働き方の多様性が獲得できるのではないかと感じました。医師の働き方の課題を解決する手法として、非常に参考になるお話でした。

宮本先生の小児科における男女共同参画についての解説では、現在の男女の働き方の差を指摘されました。

現状の医師個人依存型の病院の経営体制がメジャーであることを鑑みると、医療の現場では即座に変化することが難しい領域だと考えられます。しかし、重要なことは「これが当たり前だから、現状はこれでしかたないから」と疑問を覚えつつも何も言わず従ってしまわないことではないでしょうか。

ひと昔前には、男女の働き方に差があって当たり前と思われていた時代がありました。その時代に比べたら、働き方改革の名のもと男女平等に働けることを善として標榜できる今の社会もそう悲惨ではないのではないのでしょうか。そしてこの変化は、現状を当たり前とせず、現状に対する疑問を周囲と共有することを惜しまない個人たちの活動の積み重ねの賜物ではないでしょうか。

宮本先生が日本小児科学会男女共同参画委員会で現状の調査をされ、今回学会で発表されたことも、この重要な活動の1つだと改めて感じます。男女共同参画の実現は、働きかた改革の一大テーマとして積極的に推進されるべきだと感じました。

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