小児期の不眠症状は4割以上が成人後も続く
「Pediatrics」より
米ペンシルベニア州立大学ミルトンS. ハーシー病院のJulio Fernandez-Mendoza氏らは、小児期に現れた不眠症状の経過を15年間にわたる縦断研究で観察した結果、小児期の不眠症状は、その43.4%が思春期も、成人後も続き、また、小児期および思春期に睡眠時間が短いと成人期に不眠症状を有するリスクが高くなるという研究結果を、「Pediatrics」3月号に発表した。
Fernandez-Mendoza氏らは、小児期の不眠症状が加齢に伴いどのように変化するのか、また、小児期と思春期における睡眠時間の長さと成人期における不眠症状との関係を検討するため、年齢中央値9歳の小児502人を長期にわたり追跡し、7.4年後の思春期(年齢中央値16歳)と15年後の成人期(同24歳)における不眠症状について調べた。3つの時点で、中等度から重度の入眠困難や中途覚醒などの不眠症状の有無を両親による評価または自己申告により調べ、また、一部の対象者にはポリソムノグラフィー検査を実施して、小児期および青年期における睡眠時間を評価した。なお、7.7時間未満を短時間睡眠と定義した。
その結果、小児期に不眠症状があった場合、思春期にも成人期にも不眠症状が継続した例(43.3%)が最も多かった。思春期に寛解して成人期も不眠のなかった例は26.9%、成人期になって寛解した例は11.2%であった。思春期にいったん寛解しながら成人期に不眠症状を再発した例は18.6%であった。
次に、小児期に不眠症状がなかった場合、思春期にも成人期にも不眠症状が現れない例は48.1%で最も多く、思春期に不眠症状が現れて成人期も続いている例は15.2%、思春期までは不眠症状はなかったが成人期になって不眠症状が現れた例は20.7%であった。思春期に不眠症状が現れたが、成人期になって寛解した例は16.0%であった。また、ロジスティック回帰で諸因子を調整して分析したところ、小児期と思春期においてそれぞれ短時間睡眠だった例が成人期に不眠症状を呈するオッズ比は、それぞれ2.63(95%信頼区間1.03~6.61)、5.54(同2.01~17.0)と有意に高かった。
著者らは、「思春期は、不眠症状が悪化するかどうかの重要な時期だ。小児科医は、特に睡眠時間が短い児を診療する場合、このことを念頭に置くべきだ」と述べ、「不眠症状は成長とともに自然寛解するのを期待するのではなく、早期介入を優先すべきだ。この際、睡眠時間を客観的に把握できれば、診療に際し有用だろう」との見解を示している。
- 書誌事項
Trajectories of Insomnia Symptoms From Childhood Through Young Adulthood
Fernandez-Mendoz J, et al. Pediatrics 2022 March 1;149(3):e2021053616.