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帝王切開による出生で悪性腫瘍リスクが上昇か
「Acta Paediatrica」より
100万人を超える小児を後ろ向きに解析した結果、帝王切開で生まれた児は、自然分娩で生まれた児と比べて2歳から14歳の間に悪性腫瘍に罹患するリスクが高く、特にリンパ腫と肉腫になるリスクが高いとする研究結果を、モントリオール大学(カナダ)のSophie Marcoux氏らが、「Acta Paediatrica」に3月17日発表した。
Marcoux氏らは、2006年4月1日から2019年3月31日の間にカナダ・ケベック州で出生した計103万4,049人の児を、2020年3月31日まで最大で14歳になるまで追跡調査し、帝王切開、経腟器械分娩(鉗子分娩または吸引分娩)、自然分娩それぞれによる出生と小児期の悪性腫瘍罹患リスクとの関連について後ろ向きに検討した。解析にはCox比例ハザード回帰モデルを用いた。
対象とした児のうち、24.1%(24万9,415例)は帝王切開により、9.4%(9万7,411例)は経腟器械分娩により出生していた。解析の結果、帝王切開で生まれた児は、自然分娩で生まれた児と比べて、全悪性腫瘍(ハザード比1.16、95%信頼区間1.04~1.30)、造血器腫瘍(同1.12、0.92~1.36)、固形腫瘍(同1.21、1.06~1.39)の罹患リスクが高かった。潜伏期間を考慮し、1~14歳、2~14歳、4~14歳、6~14歳の4つのグループを作って検討したところ、2~14歳のグループにおいて、全悪性腫瘍(同1.21、1.05~1.39)、リンパ腫(同1.81、1.11~2.93)、および肉腫(同1.78、1.27~2.49)のリスクが最も高かった。一方で、経腟器械分娩と悪性腫瘍罹患リスクとの間に有意な関連は認められなかった。
以上を踏まえて著者らは、「今回の結果から、帝王切開による出生と小児期における悪性腫瘍の罹患は関連する可能性が示唆された」と結論付けているが、「帝王切開では母体の細菌叢が児の粘膜に移行しないが、これが免疫に影響を及ぼす可能性や、分娩時に出されるホルモンからの影響などを含め、悪性腫瘍の罹患リスクを高めている要因について詳しく調べる必要がある」と付言している。
- 書誌事項
Association between caesarean birth and childhood cancer: An age-lagged approach
Marcoux S, et al. Acta Paediatrica. Published online March 17, 2022. doi: 10.1111/apa.16335