
妊娠中の医療用消毒剤使用で児の喘息とアトピー性皮膚炎リスクが上昇
「Occupational & Environmental Medicine」より
妊娠中に医療用消毒剤を頻回に使用した女性から生まれた児は、妊娠中に消毒剤を使わなかった女性から生まれた児と比べて、3歳時点における気管支喘息やアトピー性皮膚炎のリスクが高いという研究結果を、山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座の小島令嗣氏らの研究グループが、「Occupational & Environmental Medicine」に3月28日発表した。
小島氏らの研究グループが用いたのは、大規模な出生コホート調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータ。2011年1月から2014年3月にかけて10万人の妊婦を調査対象に組み入れ、この中から条件を満たした7万8,915組の母子について、妊娠中の職業上の医療用消毒剤使用と、児の3歳時点におけるアレルギー性疾患の発症との関連について分析した。
医療用消毒剤の使用頻度については、質問票により、妊娠してから妊娠中期まで消毒剤を仕事で半日以上にわたって扱った回数を「いいえ」「月1~3回」「週1~6回」「毎日」から回答してもらった。また、質問票を用い、児が3歳の時点で気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーであると医師に診断されたか否かを調べた。解析には多変量ロジスティック回帰モデルを用い、小児のアレルギー疾患に関連する因子を調整した上で解析した。
その結果、仕事で医療用消毒剤を毎日使用した妊婦から生まれた児は、使用しなかった妊婦から生まれた児と比べて、3歳時点における喘息(調整オッズ比1.26、95%信頼区間1.05~1.52)とアトピー性皮膚炎(同1.29、1.06~1.57)を発症するリスクが高かった。消毒剤の使用頻度が高まるほど、児が3歳時点において喘息やアトピー性皮膚炎になるリスクが高まる傾向も見られた(両者とも傾向P値<0.01)。一方、消毒剤の使用と食物アレルギーの間には有意な関連は見られなかった。
著者らは、今回の研究は約8万組の親子を追跡調査したもので信頼性が高いとしながらも、「質問票調査によったため、実際の医療用消毒剤の曝露状況を反映しているものではない」と研究の限界を認めている。その上で、「消毒剤は感染症予防の有効な手段であり、消毒剤の使用と児のアレルギー性疾患の発症が関連するメカニズムについては、さらに詳細な研究が必要だ」と述べている。
- 書誌事項
Prenatal occupational disinfectant exposure and childhood allergies: the Japan Environment and Children’s study
Kojima R, et al. Occupational & Environmental Medicine. Published online March 28, 2022. doi: 10.1136/oemed-2021-108034